戸澤の週報

2022年08月21日

働く喜びの回復

お盆が過ぎ、まだまだ暑い日が続いていますが、夕方から夜は随分涼しくなりました。
この暑さも間もなく、終わりに近づく事でしょう。
そろそろ秋が見えてきました。
 
今週はこれから成長していく企業について考えて見たいと思います。
最近までは生産性の向上こそ、企業を大きく成長させるための、大きな要因になると考えていました。
これは決して間違ったことではないかと思いますが、生産性の向上だけでは、本当の意味では理想の会社にはなりません。
何を持って理想と言うかも、これもまた非常に難しいテーマですが、少なくても、働いていてやりがいがあり、自分の命である時間を費やしても
後悔がない仕事があることです。
そもそも会社を大きく成長させようとして、成長するものではありません。
自分たちの存在が、世の中に必要とされていることが大前提です。
現在の日本、世界、地球環境が抱えている問題に対して、解決策を持って実践していることが大切です。
今風に言えば、会社のパーパスが世の中のニーズに調和してることと言えそうです。
 
生産性の向上の問題は、効率を重視するあまり、仕事を分業化しすぎることです。
仕事の細かく分けていくと、ひとつひとつの仕事が容易になるため、誰にでもできるようになります。
当然、覚えるのにも時間が掛からないため、深い知識がなくてもできるようになります。
標準化と言えば、良い側面を見ていますが、逆に言えば、仕事の深みを感じる機会を失うということです。
マルクスの資本論には、働く喜びを取り戻す方法として、「構想と実行の再統合」を提唱しています。
構想とは仕事を実現するために、色々と考える精神的な活動を指します。
実行は構想によって決めた内容を実際に実行する肉体的な活動を指します。
私は決してマルクス主義を訴えているわけではありませんが、行き過ぎた資本主義を考える時に、マルクスの資本論は参考になります。
資本主義がここまで広がる以前には、多くの仕事が、自分が何をどのように仕事をするか考えて、自らその仕事を実行していました。
例えば、傘を作る職人を考えて見ると、頼まれた仕事に対して、どのような模様にするのか、いつまでだったらできるのかなどを自分で構想し、実行します。
初めから最後までその仕事に関わっているので、その仕事全体が見えています。
そのため、この仕事の意味を捉えることができます。
確かに全ての工程について自分が得意ではないかもしれません。
生産性の観点では、全てを分業化した場合よりも劣る可能性は高いです。
しかしながら、仕事に対しての取り組み方はどうでしょうか?
自分で考え、自分でやると決めたことは、人から言われてやる事に比べて、その仕事に対して全く違った意識が生まれます。
それらの仕事の過程で吸収したノウハウや知識は時間と共に蓄積されていきます。
 
資本主義の今後の行方と、企業に置ける働く喜びの回復は、同じ方向性にあるような気がしてなりません。
マルクスは資本主義に代わる、新たな形については、提示をしないままこの世を去ってしまいました。
企業に置ける今後の行方も、資本主義の行方と一緒に、これからは変ってくるはずです。
働く喜びをどのように取り戻すのか?大きな課題となりそうです。
 
参考図書:マンガでわかる!マルクス「資本論」に脱成長のヒントを学ぶ
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宝島社 監修 斎藤幸平

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