戸澤の週報
2025年04月12日
野中郁次郎教授が教えてくれたもの
4月も、もう半分が過ぎようとしています。
東京の桜はだいぶ散っていますが、今年は長く持った気がします。
また、1年後ですね。
日本の経営学の第一人者でありました、一橋大学の野中郁次郎名誉教授が今年1月に亡くなりました。
日本だけではなく海外でもその名を知られた経営学者です。
その著書である「知識創造企業」は世界中に革新を与えました。
野中教授は知識を大切にしており、以下のプロセスで知識を捉えています。
・組織にある暗黙知をみんなが分かる形式知する。
・それら形式知を組み合わせて、組織に新しい価値を作る。
・そして、それら形式知を個人が取り込み、暗黙知へとする。
これらの繰り返しにより、企業は成長していくと有名な「SECIモデル」を創りあげました。
当社はこの考え方を全面的に支持しています。
過去に積み上げた様々な経験により、多くの学習をしているはずです。
その結果得たものは「知識」そのものです。
この知識をどう生かすか、正しく導いてくれたのが、野中教授です。
「知識創造企業」は、なかなか難しい本です。
言葉が難しいと言うよりも、知識が何よりも価値のあると思えない内は、理解できないのかもしれません。
多くの方同様に私自身、座学と言うより、実践で多くの知識を身に付けてきました。
ここで言う知識とは、何かの物の名前や意味を知っていると言うだけではありません。
・顧客と接する上で、過去にあった成功例や失敗例。
・自社の社員と接する上で、うまく行ったこと、行かなかったこと。
・自分自身の仕事に対する心構えなど。
それら多くのことが、暗黙知として人の頭の中にだけ留まっていて、外に出ていないのです。
人が経験したことを、きちんと組織の力にできるように、知識を表に出した上で、より価値あるものを生み出してしまおうと言うことです。
人を中心に考えた、実に日本らしいやり方です。
この「SECIモデル」は日本以外でも多くの支持を得たのは、どの国も同じ課題を抱えている証拠だと思います。
人がそれぞれ経験を積むことはとても大事です。
しかし、先人たちが既に経験して獲得した知識があるのであれば、今を生きる私達としてはそれらを活用し、従来たどり着いていない領域で活動すべきです。
野中教授は、人生の後半戦で、今よく言われている「人的資源」に真っ向から反対をしました。
人と言うものを資源や手段としてみることに反対しました。
人は企業の目的達成のために消費されるものではなく、価値創造の主体であり源泉と扱われるべきだと主張されました。
人に対する暖かな目で、大きな期待を寄せていた野中教授の考え方は、現代の不確実な世の中において、より大切なものになってきました。