戸澤の週報
2025年03月22日
性弱説
寒い日が過ぎ去り、すっかりと春の陽気となりました。
間もなく関東では桜が咲くようです。
また、あの夏日がすぐにやってこないか、今度は心配になってしまいますね。
今週は性弱説について考えてみたいと思います。
この言葉はセンサーや各種電子機器メーカーのキーエンスが創った言葉です。
性善説でも性悪説でもない性弱説と言う言葉には、人間への非常に深い洞察が含まれた言葉であることが分かりました。
例えば、会社で何か新しいことをやりたいことがあったとしましょう。
きちんとマニュアルを作り、ルールを決めて、社内に連絡をすればそれで大丈夫と多くの人は思います。
しかし、実際にはどうでしょう?
ほとんどの場合は、うまく機能していないのではないでしょうか?
この場合、きちんとやり方を決めて説明すればみんながきちんとやってくれると考えるのが、性善説です。
しかし、人間には様々な事情があります。
中には業務が立て込んでおり、その連絡を気が付かない人もいるでしょう。
気が付いたとしても、現状維持バイアスが働き、変えたくないと思うこともあるでしょう。
これらの可能性を事前に理解し、抜けを無くすための仕組みを入れておくことが性弱説の考え方です。
例えば気が付かないと言うことを無くすために、必ずチーム内で伝達し、伝達終了の連絡をもらうことで漏れを防げるでしょう。
変えたくないと思う人に対しては、きちんと説明をする機会を設けることで、徐々に変わってくるでしょう。
そして、上記のような仕組みが機能しているか、確認する仕組みを設けることが大切であるとあります。
非常に納得です。
日本の企業のほとんどが性善説をベースに経営し、その結果社内を一枚にすることに苦労しているのではないでしょうか?
意外に感じるかもしれませんが、外資企業の場合はボスの命令に背くことはすなわち自分の進退に直結するため、社内が非常にまとまりやすい性質があります。
(但し、それ以外のことで、様々な経営の難しさはありますが)
日本や欧州などの雇用形態の国々は、性弱説で捉えることにより、全社員を活躍の最前線に配置することが可能になるのではないかと思います。
なぜなら、前提として「人は弱い」と考えることで、現場のつまずきや迷いを支援する仕組みが整備され、全員が前線に立てるようになるからです。
別の言葉で、「戦略は細部に宿る」と言う表現があります。
戦略がたとえ素晴らしかったとしても、実際にそれが機能するかどうかは、実行計画にかかっていると言うことです。
自分なりに表現すると「幸運の女神は細部に微笑む」かなと思っています。
性弱説と多くの共通点を持っていることを考えると、大昔から多くの人が感じていた苦労の一つなんだろうと、なんだか親しみすら感じてしまいます。
(参考図書)
キーエンス流性弱説経営 高杉康成 著 日経BP