戸澤の週報

2023年10月29日

積読

あのどこまでも暑かった夏はいなくなり、過ごしやすい気候となりました。
紅葉も始まっており、この週末は観光地へ続く道はきっと混んでいたことでしょう。
 
山本貴光先生に教えてもらったもう一冊の本は、「積読こそが完全な読書術である 永田希著 イーストプレス」です。
積読と言う、我々が読書生活の中で陥りやすい現象について、違った視点をもらえる本です。
著者であり書評家の永田希さんは、そんな我々に積読こそが読書であると言う大胆な視点を提供してくれます。
印刷技術の歴史まで遡り、本ができたことは、書かれたものを保存されるためであり、本を積んで、読まずにおくことは、本に対する本来的な態度だと言われています。
だから積読することにいちいち「うしろめたさ」を感じる必要はないという主張です。
もちろん、ただ積んどけばいいというわけではなく、自分の「ビオトープ」を構築し、その環境の中で情報の濁流に抗うための運用を行うという考え方です。
ビオトープとは広義には生物の生息場所を表す言葉で、この場合は「周辺地域から明確に区分できる性質を持った生息環境の地理的最小単位」と言えるでしょう。
現在は情報が濁流の様にあふれていることはご存知の通りだと思います。
そんな濁流に対応するための正しいビオトープを創るための方法は、積読させる本のテーマだと言います。
どんな内容でも構わないので、その時々に自分なりのテーマを持っていることが大切で、そのテーマに沿った視点から、本文を読まなくてもある程度自分なりの見解を述べられるようになると言います。
 
アメリカの哲学者であるモーティマー・J・アドラーは読書の方法を4段階に分類しています。
①初級読書
②点検読書
③分析読書
④シントピカル読書
初級読書とは、最初のページから最後まで読んでいく、普通の読書の仕方です。
点検読書とは、ある本に何が書かれているかを読んでいくやり方です。
書名や副題、解説や目次、あとがきなどの、いわゆる本文ではない部分から情報を得ようとする読み方です。
初級読書と点検読書は、世の中に氾濫しているいわゆる駄作ではない、本当に重要な本を探すための読み方です。
ほとんどの人は初級読書しか行っておらず、時間がいくらあっても足りないと言っています。
点検読書をもっと活用し、自分の時間を割くだけの価値があるかをもっと見極めよと主張しています。
私達はお金を出して買ってしまうと、その時点でこの読み方はもったいないと思ってできなくなってしまいます。
しかし、もっと思い切って割り切る事が大切なのかもしれませんね。
分析読書は、一冊の本を徹底的に読むことです。
ある本の構造を捉えて、その構造の中で重要な部分を把握し、それぞれ読者の立場を明らかにするという方法です。
本当に重要な本に対しての読書法です。
最後のシントピカル読書は、複数の本を横断し、あるトピックについて横軸を横軸を通すために読むという方法です。
いわゆる研究に当たるものです。
ここまでに至るためには、自分なりのテーマを持っていることが必須になりますね。
なかなか読書方法について俯瞰的な知識がなかったので、少し違った考えで読書に向き合うことが出来そうです。
堂々と積読をするために、まずは自分なりのテーマを持ったビオトープの環境を創り上げる必要がありそうです。
その上で、自分のその時々の状況に合わせて常にテーマを入れ替えたり、お手入れしてあげることで、本当に良質な読書が可能になるような気がしてきました。

 

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