戸澤の週報
2020年08月23日
ドリルの穴
耐えきれないほどの暑さが、この休みで少し緩んできました。
連日の35度越えにようやく体が慣れてきた頃でしたので、30度くらいはかなり軽く感じます。
それでも街では救急車を今日も見かけましたので、熱中症の症状はまだ多くみられているようです。
マーケティングの世界で有名な話の一つとして「ドリルの穴理論」があります。
アメリカのセオドア・レビット博士が1968年に発売した自身の書において発表した考えです。
自分自身の理論ではないようですが、この時の書で紹介したことによって、世界中のマーケティングや企業に影響を与えた極めて著名な理論です。
内容としては極めてシンプルで、ドリルを買いに来る顧客が必要なのは、ドリルではない。穴である。と言う内容です。
例えばホームセンターに4分の1インチのドリルを買いにしたとして、仮に売り切れだったとして、そこの店員は「売り切れです。」と言って顧客は帰ってしまいました。
商売がうまくない店で良く見かける光景です。
しかし、顧客は本当に4分の1インチのドリルが欲しかったのでしょうか?
本当に欲しかったのは、4分の1インチの直径の穴のはずですね。
ドリルがほしいと言ってきたとしても、本当にドリルが好ましいのは、かなりの数の穴をあける必要がある人です。
そうではないのであれば、きりでも良かった可能性が十分あります。
取り揃えが良いホームセンターであれば、他にも多くの手段があったかと思います。
マーケティングの用語で「プロダクトアウト」と「マーケティングイン」と言う考え方があります。
プロダクトアウトは売り手都合、マーケットインは買い手都合と訳されます。
これは別の言葉で言うと「手段」と「目的」をはき違えるとも言いますね。
相当強く意識をしておかないいと、すぐに混同してしまいます。
例えば、企業が展示会を行うのは、立派なブースを作るために行っているわけではなく、有望な見込み顧客が欲しいからです。
テレアポもアポイントが欲しいから行っているわけではなく、売り上げに繋がる案件が欲しいから行います。
これらは手段が目的になってしまう良くあるケースですね。
他の言い方で言うと「部分最適」とも言えます。
あくまでマーケットインにこだわって、自社の製品やサービスを見つめていないと、簡単にプロダクトインの罠にはまってしまいます。
輸入車を広く取り扱っている「ヤナセ」のコーポレートスローガンは「クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている。」です。
こちらを聞いていると、ドリル理論を良く理解された方のフレーズだと思いました。
松下幸之助さんはまだ会社が小さかったころ、従業員に、『お得意先に行って、きみのところは何をつくっているのかと尋ねられたら、松下電器は人をつくっています。電気製品もつくっていますが、その前にまず人をつくっているのですと答えなさい』とよく言われたようです。
これもドリル理論の応用ですね。
本当に商売が分かっている方は直感的にドリル理論を大切にしていると言えそうです。
自分の会社にはどのように考えられるか?
ゆっくりと考えてみたいテーマです。