戸澤の週報
2023年07月09日
日本の半導体復権
雨の日は大分少ないのですが、関東ではまだ梅雨は終わらないようです。
既に真夏の気候ですが、梅雨が明けたらもう一つ厳しくなるのでしょう。
ラピダスの会社設立の記者会見からおよそ8か月がたちました。
最先端の2ナノメートル世代の量産実用化を目指して、これから進めて行くということです。
2ナノメートルと言うと、ファンドリ世界一のTSMCでも量産化は2025年を予定している。
つまりは世界を見渡してみても、最先端の技術であるということです。
これを2027年に実現しようという、非常に挑戦的な目標を掲げています。
これがもし実現できたとしたら、グルーバルの開発競争で先頭集団に一気に返り咲くことを意味します。
ラピダスはファウンドリーと言う、自社ブランドではなく、他社から半導体製造の依頼をもらって製造を行う形態です。
このファンドリトップの台湾のTSMCは、先だって日本の熊本に工場を建てることを発表しました。
2022年に建物の建築がスタートし、今年中には建物が完成し、2024年中には量産製品の生産を開始する見込みです。
先週には台湾3位のファンドリーメーカーであるPSMCが日本のSBIホールディングスと共同で日本に工場を建て生産を開始するというニュースが入ってきました。
ここ1年で状況はすっかりと変わって、半導体が産業の中心に来ているではと感じられるほどの状況となってきました。
日本は1980年代には全世界の半導体の半分をしめるまで、半導体のビジネスを大きくできました。
今は約6%まで低下しています。
リーマンショック以降、半導体の前工程の工場を自社で持ち続けていく事は難易度の高いものになりました。
日本は工場を苦労して作ったからこそ、ファンドリーに製造移管することが困難な状況になっていました。
自社で設計し、自社で製造まで行うことは、垂直統合型と呼ばれ、日本企業の標準的な形でした。
その後水平分業型が主流になってきていましたが、日本企業は最後まで垂直統合型にこだわってしまったのが、競争力を失った一つの理由と言えそうです。
ラビダスは半導体における日本の夢のような会社です。
しかしながら成功するまでに越えなければいけないことが大きく4つあります。
一つはお金です。
量産まで5兆円は必要と言われていますが、ここは経産省が本気でやると言っているので、大丈夫だとしましょう。
次に技術的な問題ですが、ここはIBMとベルギーに本社を置く国際的な研究組織であるIMECがサポートしてくれそうです。
次に来るのが半導体の人材です。
日本の半導体が急速に衰退していたこの30年間は、多くの半導体人材が別の役割についてしまいました。
それでも当時20代30代の人たちが現在60~70歳でギリギリ残っています。
これらベテランメンバーが活躍し、同時に教育もできることができれば、人材の問題はギリギリで解決できそうです。
あとは、仮に2ナノメートルの製品を作ったとして、日本のファンドリーの会社に、誰が発注するのかと言う問題です。
元日立の半導体トップで、ラピダスの小池社長は、少量多品種の注文を集めて、ビジネスにすると言われています。
こちらは簡単ではないと思いますが、TSMCを始めとする大手ファンドリが細かい注文に対して決していい顔をしていないのは事実です。
それらの受け皿になることは可能です。
どちらについても、これから先の道は茨であることは間違いなさそうです。
この偉大な挑戦に対して、多くの人が最初からできっこないと否定的に見ているのが気になります。
国と経営陣が気合を入れており、昔と比較して環境も悪くないので、今回はうまくいく可能性があります。
過去にダメだったからと言って、今回も駄目であるということはありません。
個人的にはラピダスの挑戦に最大限の賛辞を贈りたいですし、量産化を成功させ、その後のビジネス化まで確実に持っていってほしいと思います。