戸澤の週報
2023年02月05日
一人合宿
2023年も早くも1ヶ月が過ぎました。
2月は日数が短いため、これまた早くに過ぎていく事でしょう。
卒業と入学、出会いと別れの季節がまたやってきます。
今年で3回目となりますが、この時期1人合宿をやっています。
ホテルにこもって昨年を振り返り、来年度以降の方向性を考えるのが狙いです。
とは言っても、一から考えるというよりは、今まで断片的に考えていたことを、一つにまとめる作業と言った方が近いかもしれません。
普段なかなかまとまった時間が取れないので、個人的には非常に気に入っています。
今年の合宿のお供は早稲田大学院・ビジネススクールの入山教授の著作である、「世界標準の経営理論」です。
この本は800ページを超えるのですが、分かりやすく説明してくれているので、驚くほど読みやすいです。
今まで聞いたことのあるものから、全く聞いたことのない経営理論まで幅広く取り扱っていて、思考の軸を大きく広げてくれます。
経営者だけではなく、事業の方向性を定める必要がある人全てにお薦めできます。
その中で一番大切に思っている理論が「知の探索・知の深化理論」です。
企業組織がどのように学習して、イノベーションを起こしていくかを説明している理論です。
基本的な考え方は、組織に従来より存在している「知」と、組織が新たに獲得した「知」を組み合わせて、新しい価値(イノベーション)を作っていくというものです。
組織は世の中に新な製品やサービスを提供する場合に、価値のあるものを出さなければならない。
それが過去の延長線上であれば、それなりの評価となります。
一方で、それが従来の概念ではない新しいアプローチで希少性があり、大きな価値があると認識されればイノベーションと言えるでしょう。
しかし、このイノベーションは具体的にどのように起こせば良いかとなると途端に難しくなのですが、この方法を説明したものがこの「知の探索・知の深化理論」です。
人間が普段認知できる世界は非常に限られています。
認知できる世界の中だけで、いくら良いものを求めていっても、知の深化しかできません。
もちろん組織が持っている知を深化させていく事は非常に重要ですし、必要なことです。
ただ、これだけでは大きな価値創造に繋がりません。
自分たちのいる場所を離れて、思い切って外に出ていく事で、自分たちが普段触れていない知に出会うことができます。
これをサーチ活動と言います。
サーチ活動した結果を組織に持ち帰って、組織が持っている従来の知に合わせていく事で、新しい価値を生み出していくわけです。
とてもシンプルだけど本質をついた考え方です。
実際にはサーチ活動にははずれも多く、確率論では効率的とは言えません。
そのため、大体の企業の新規事業開発室などのサーチ活動を行う部署は、初めは良いのですが長く続かないものだということです。
初めから、サーチ活動の捉え方を、長期的なものとして、会社としてその価値を認めた上で取り組むことが重要です。
従来の延長線上では全く意味がないので、サーチ活動は分からない人から見ると、この人たちは何を遊んでいるのかとみられることもあるでしょう。
しかし、これからの日本企業に必要なことは、知の深化ではなく、知の探索だと思います。
この知の探索に、どれだけの情熱を掛けることができるかどうかで、将来が決まってくる気がしてなりません。
そして、この「知の探索・知の深化理論」を大きく発展させ、よりイノベーションの具体的理論を構築したのが、日本の野中教授です。
野中教授が作った「SECIモデル」は大変参考になるものですが、また別の機会に触れます。
「世界標準の経営理論」には、このような経営理論が多く載っています。
思考の軸を作ってくれる良書だと感じます。