戸澤の週報
2022年10月30日
多様性
日増しに陽が落ちるのが早くなっています。
会社の窓から見える富士山は冠雪しており、一気に冬景色となりました。
今年もあと2ヶ月です。
米国マサチューセッツ州南東部の大西洋岸から8キロほど沖合に、マーサズ・ヴィンヤード島と呼ばれる島があります。
米国大統領だったビル・クリントンやバラック・オバマのような方が避暑で訪れる島です。
この島は現在ではアメリカの有名な観光地であるが、その昔は島の外との隔絶が理由による先天性に耳が聞こえない人の数が飛び抜けて多かった。
これは遺伝性の聴覚障がいが原因だった。
アメリカにおける聴覚障がいの平均の割合が、6000人に1人に対して、島のある地域では4人に1人に及んだという。
この島では手話を健常者、聴覚障がい者問わずに、みんなが使っていたため、聴覚障がい者は日常生活で困ることをあまりなかったそうです。
同時に耳が聞こえる人も、耳が聞こえない人が多く身近にいることを特別なことと考えていなかったそうです。
障害とは何なのかを考えるきっかけとなりました。
普通に考えると耳が聞こえなければ、様々なことが困難で、出来ないことが多くあると考えてしまいます。
しかしこの島では、耳が聞こえないことは、特別なことではなかったため、障がいとは見なされていなかったのです。
耳が聞こえる人も、聞こえない人も、手話で話すことが日常でした。
耳が聞こえる人同士でも、声が届かないところでは手話で話すこともあったと言います。
この話から見えてくるところは、障がいの捉え方が、数が少ない特別なものというという見方から生まれるということです。
普段から接している専門家を除いて、日常の生活の中で、障がいと言われる内容に接する機会が限りなく少ないこと自体が、障がいという概念を生んでいるのかもしれません。
健常者と障がい者を区別し、場所を分けることで、解決することもあるのかもしれません。
しかし、ヴィンヤード島の事例は、我々に強い示唆を与えてくれます。
多様性が求められて久しくなっています。
色々なタイプの人間が一堂に集まることのメリットが強調されている反面で、相互理解にはかなりの時間と労力が必要なことも事実でしょう。
一番大切なことは、人間は知らないことに対しては、一般的な考え以上のものを持つことができません。
お互いの理解のために、色々なことを知ることは非常に大切なことです。
障がいや病気、文化や考え方など、多くのことに対して、理解を深めていく努力をすることで、本当の意味での多様性は深まっていく事になりそうです。
そこまで行って初めて多様性の強さが発揮されることになると思いました。
今回読んだ本は、ノーラ・エレン・グロースの「みんなが手話で話した島:ハヤカワノンフィクション文庫」です。
読書でしか得られない情報であり、世界観でした。
まさに読書の醍醐味ですね。