戸澤の週報
2024年10月12日
時空間を自由に移動する
突然ですが、問題です。
平安時代の宮廷料理では醤油のルーツである「醤:ひしお」が、塩・酢・酒と並ぶ調味料のひとつとなっていた。
しかし、平安末期から鎌倉期にかけて武士が台頭する騒乱の時代の中で都での醤づくりはあまり行われなくなりました。
その後、「醤」の字が再び史料に登場するのは村待ち時代以降で、当時の用語辞典には「醤油」と言う名で登場していることから、この頃には液状の調味料として定着していたことがうかがえる。
問題 下線部のような辞典の発達は、当時京都の文化が地方に広がり始めていたことと関係がある。
このような広がりが生まれるきっかけとなった歴史的事件を答えよ。
どうでしょうか?
なかなかむつかしい問題です。
こちらの問題は、2024年の私立中学校の入試問題です。
答えは、応仁の乱です。
応仁の乱は室町時代の出来事として学ぶ出来事として有名です。
もし、「1467年に起きた出来事は?」「第八代将軍足利義政の跡継ぎ争いと守護大名同士の権力争いから起きた出来事は?」と聞かれれば多くの方が答えられたと思います。
この応仁の乱は京都で起こり、11年間も続き、戦乱を避けて地方に逃れた人々が多くいました。
その結果京都の文化が地方に広がり、それらを地方の人たちが理解する必要性があり、用語辞典が発達したのでしょう。
一見醤油と応仁の乱は全く関係が無いように思えます。
しかし、よく考えてみれば、11年も内戦をしていたら、多くの人が別の場所に行きたくなります。
そして、今から557年前のことです。
場所が違っていたら、文化は大きく違っており、そこで使われる言葉も驚くほど違っていたことでしょう。
だからこそ用語辞典が急速に発展したのだと思います。
我々の頭は、応仁の乱は1467年(私は、いしむなしと覚えました)とだけ覚えてしまう癖があります。
もちろん、限られた時間であるということもあるでしょう。
なかなか一つの出来事にそこまでかけて深堀をすることは難しいものです。
但し、発想を変えることはできます。
当時の背景を推測することで、全く違った見え方になります。
背景やその周りのことなど、できる限りの流れを理解することが大切なのだと思います。
この問題を出した中学校は、そのことを伝えたかったはずです。
見事な良問であり、私自身勉強に関する見方が大きく変わりました。
勉強を詰め込みだとか、暗記するだけと捉えているうちは、本質が見えてきません。
何事を考えるにも最低限の知識はどうしても必要になります。
しかし、本当の勉強はそこから先だったのです。
ベースとなる知識を活用して、頭の中で時空間を自由に移動するのです。
そして、点と点を繋いで線にして、線を合わせて面にする。
面を重ねて形を作る。そして、形を組み合わせて、自分なりの理想を作っていく。
このことを知って、受験勉強をしたかったものです。
おそらく一定ライン以上の合格には、ただ知識を覚えるだけではなく、時空間の自由移動が必要だったのでしょう。
奥深いものです。