戸澤の週報
2021年05月16日
孫子
雨が降った一週間でした。
今年の梅雨入りは早そうだと言う話もありますが、もう少し5月の気候を楽しみたいです。
本当は山に入るのに一番良い季節ですが、なかなか行けないのが残念です。
戦略の勉強をし直しておりますが、改めて孫子を見ると、奥深いことに気が付きます。
紀元前500年くらいの中国春秋時代に軍事思想家である孫武が書いたものとされています。
この本で一番有名な内容は以下かと思います。
「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」
この本は戦争の戦略本なので、当然戦争について書いてあります。
敵を十分に知り、自分たちを正しく理解していれば、何回戦っても負けることは無い。
とあります。
ここでのポイントは「負けることは無い。」です。
孫子の兵法の本質は「負けないこと」にあり、「勝つこと」ではありません。
当時の世の中は、生きるか死ぬかの戦いです。
一回の負けは滅亡を表し、国が滅ぼされることになります。
その為、華々しい勝利を一回することではなく、勝ちはなくとも、負けずに国が継続することが大切なのです。
翻って現在のビジネスを考えてみます。
大競争時代と言われて久しくなっていますが、会社間が激しく戦っていることは異論がないかと思います。
一回の負けが、そのまま会社の消滅には繋がらないかもしれませんが、打ち所が悪いと、この世の中から退場しなければいけないこともあります。
大切なことは、いかに負けないか?です。
仮にこちらから敵と戦わなくても、相手が何らかの失敗をして、自滅していくこともあります。
とても勝てる相手ではなかったとしても、時間が経つことで、昔の強さを失っていくこともあります。
確実に勝てる時機が来るまでは、自らを強くしておくことに専念する。
そして、例え攻められたとしても、負けないだけの備えをしておくことが大切だと言います。
そして、時機が来たら、その時には一気呵成に集中して、短期間で相手をたたいてしまう事が大切と言うことです。
逐次投入は効果がなく、やる時には兵力を集中させて、勢いをつけて強い流れで押し込んでしまうことが効果的と言うことです。
孫子を読んでいると、可能な限り、ギリギリまで、戦わずに済むのであれば戦いを避けることを良しとしています。
こちらから戦いを起こしてしまうと、単純な確率論で50%の勝率です。
もし相手が強ければ、どれだけ良い作戦を用いたとしても、それだけ勝てる可能性は低くなります。
しかし、仮にどんなに強い相手だとしても、長い時間の中では、自滅する可能性や、自ら、市場から退出していくことも十分可能性があります。
この事は、株式でも同じことが言えそうです。
短期での売買は、失敗が多くなりますが、長期的な取引ですと、リスクは下がります。
仮に途中で下がったとしても、究極はもう一度上がるまで待てば良いわけです。
古代東洋の「孫子」と、近代でナポレオンの戦略を扱ったクラウゼビッツの「戦争論」と合わせて勉強することで、時代や文化を超えた、戦略の原点と呼べる世界観が見えてくるようです。
まだまだ、勉強することは多くあります。